皆様こんにちは、Kasaの旅路へようこそ。
突然ですが、皆様「新幹線通勤」はご存知でしょうか?
その名の通り、新幹線を利用して通勤することを指します。新幹線を使うことで、より遠くの職場まで通うことが可能になり、例えば東京から100kmほど離れた宇都宮や高崎などの北関東の主要都市からでも約1時間で通勤できます。これにより、転居せずに働けるという大きなメリットがあります。
そんな新幹線通勤は東北地方でも行われていますが、今回は岩手県・JR一ノ関駅で朝の新幹線を観察し、どのような流動があるかを見ていきます。
JR一ノ関駅の紹介

今回紹介するJR一ノ関駅は、岩手県最南端の「一関市」に位置する駅です。
この駅には、東北新幹線のほか、在来線の東北本線と大船渡線が乗り入れています。また、岩手県の人気観光地である「平泉」や「猊鼻渓」などへのアクセス拠点としても重要な役割を担っており、岩手県内で2番目に多い乗降客数を誇るターミナル駅となっています。
一関市の位置関係

一ノ関駅がある一関市は、岩手県の県庁所在地・盛岡市と、東北最大の都市・仙台市のほぼ中間に位置しています。距離にしておよそ90kmなので、在来線では約1時間半かかりますが、新幹線なら30~40分で移動が可能です。そのため、一関から盛岡・仙台へ新幹線で通勤する人も少なくありません。
しかし、同じ距離にある盛岡と仙台では、都市の規模に大きな差があります。仙台は東北地方の経済・ビジネスの中心で、多くの企業が集中しているため、一ノ関駅からなら盛岡よりも仙台へ向かう通勤客の方が多いと考えました。
今回はこの予想を踏まえ、岩手県・JR一ノ関駅の平日朝の新幹線の様子を通じて、岩手県における新幹線通勤の実態を探っていきます。
新幹線定期券とは
新幹線定期券(FREX)は、指定された区間の新幹線と、それに並行する在来線を自由に乗り降りできる定期券です。たとえば「盛岡~一ノ関」の定期券なら、東北新幹線のほか、在来線の東北本線も利用できます。

通常、新幹線定期券で利用できるのは自由席のみです。そのため、「はやぶさ」「こまち」「かがやき」「つばさ」などの全車指定席の新幹線は、基本的には乗車できません。しかし、盛岡~一ノ関~仙台では、以下のような特例があります。
一ノ関駅には基本的に「やまびこ」が停車しますが、朝夕はその代わりに「はやぶさ」が停車します。また、臨時列車を中心に「こまち」が停車することもあります。この特例のおかげで、朝の通勤時間帯でも「はやぶさ」「こまち」が利用でき、新幹線通勤がスムーズに行われています。
では、一ノ関駅の朝の新幹線の様子を見てみましょう。
仙台・東京方面の様子
6:48発 はやぶさ102号 東京行き

はやぶさ102号 東京行き
全車指定席(1~8号車、12~17号車の空席を利用可能)
一ノ関 6:48 → 仙台 7:19 → 東京 8:56
一ノ関から仙台・東京方面へ向かう朝の最初の新幹線が「はやぶさ102号」です。
この列車は一ノ関を発車した後、仙台まで各駅に停車し、その後はノンストップで首都圏・東京へ向かいます。
「はやぶさ」は全車指定席ですが、前述の特例により、仙台までの区間では新幹線定期券のみで普通車の空席を利用できます。

発車が近づくとホームには多くの人が集まり、乗車口ごとに列ができていました。「はやぶさ」を定期券で利用する場合、普通車であればどこに乗ってもOKです。特定の車両に集中する必要がないため、乗車口の列は分散しています。
しかし、この列車は東京行きのため、通勤客だけでなく、大きな荷物を持った出張客や旅行客も目立ちました。実際に乗車する人の様子を見ていると、仙台までの通勤客と、東京方面へ向かう出張・旅行客が半々くらいの割合のように感じました。

列車が到着すると、乗車口の列に並んでいた人々が次々と乗り込んでいきます。

乗客を乗せた「はやぶさ102号」は、東京方面へ向けて発車していきます。
この列車は、東北新幹線の主力車両であるE5系と、秋田新幹線のE6系を連結した17両編成で運行されており、輸送力に長けています。これは首都圏へのビジネス需要を支えるだけでなく、仙台までの通勤ラッシュにも対応しているのが印象的です。
一ノ関では比較的余裕のある車内も、この先のくりこま高原や古川で続々と乗客が増え、仙台到着時にはほぼ満席になります。やはり、仙台を中心とした新幹線通勤の需要は相当なものだと実感しました。
古川駅での朝の新幹線ラッシュを撮影した動画を紹介します。
筆者も以前この動画を見ましたが、仙台方面への通勤客の多さに驚きました。
7:10発 やまびこ94号 仙台行き

「はやぶさ102号」が出発してから約20分後、次の新幹線「やまびこ94号」が到着します。この列車は、盛岡~仙台のみを結ぶ列車で、朝の通勤客向けに設定されているのが特徴です。

やまびこ94号 仙台行き
自由席:1~8号車
一ノ関 7:10 → 仙台 7:42
この「やまびこ94号」は10両編成ですが、特筆すべきはその座席の構成です。自由席が8両もあり、普通車はすべて自由席になっています。

発車前のホームを見てみると、各乗車口には2~3人ずつの列ができています。
この列車は仙台行きなので、ほぼ全員が仙台への通勤客です。ただ、一ノ関から仙台への通勤客の数は意外と多くない印象を受けました。宮城県内であるくりこま高原や古川から仙台へ向かう人は多いものの、岩手県や一ノ関からの流動はそこまで旺盛ではないのかもしれません。
7:42発 やまびこ50号 東京行き

やまびこ50号 東京行き
自由席:1~6号車
一ノ関 7:42 → 仙台 8:11 → 東京 10:24
一ノ関を3番目に出発する東京行きの「やまびこ50号」。
この列車に乗ると、仙台には8時過ぎに到着するため、仙台市内の始業時間に合わせるにはちょうどよいタイミングです。新幹線通勤をする人にとって、朝の時間帯で最も利便性の高い列車となります。
自由席は1~6号車。この列車は東京行きのため、出張や旅行などの指定席需要がありますが、それでも仙台への通勤客、その他短距離の乗客が多いことに配慮し、6号車まで自由席として設定されています。

ホームの様子を見てみると、乗車口には4~5人ずつの列ができていました。先ほどの「やまびこ94号」と比べると若干増えている印象ですが、自由席の数が2両少ないことや、東京方面への需要を考えると、仙台までの通勤客の数自体は大きく変わらないように感じます。
この状況から考えると、仙台への通勤需要が特に多いのは「くりこま高原駅」までと推測できます。一ノ関から仙台へ通勤する人も一定数いるものの、岩手県と宮城県の間の人の流れはそこまで大きくなく、生活圏も異なるため、一ノ関から仙台への新幹線通勤は少数派であることが分かります。
盛岡方面の様子
7:12発 はやぶさ・こまち95号 新函館北斗・秋田行き

はやぶさ・こまち95号 新函館北斗・秋田行き
全車指定席(1~8号車、12~17号車の空席を利用可能)
一ノ関 7:12 → 盛岡 7:49 → 新函館北斗 10:01/秋田 9:32
ここからは下り・盛岡方面の様子を見ていきます。
盛岡方面の一番列車は、7:12発の「はやぶさ・こまち95号」。朝に1本しかない「はやぶさ」と「こまち」が連結した珍しい列車です。通常、「はやぶさ」「こまち」は仙台~盛岡間をノンストップで運行しますが、この列車は仙台~盛岡の各駅に停車していきます。

この列車でも、定期券のみで普通車の空席が利用できます。
このうち、ホームの中央~後方に「はやぶさ95号」が停車しますが、こちらはエスカレーターから近く、どの号車の乗車口にも3~5人ほどの列ができていました。ただし、この列車は盛岡より先、北海道・新函館北斗まで向かうため、スーツケースを持った旅行客の姿もちらほら見られました。

一方、ホームの前方には、秋田行きの「こまち95号」が停車します。
「はやぶさ」だけでなく「こまち」も定期券で空席を利用できますが、「こまち」が停車する位置は、階段やエスカレーターから遠いため、比較的空いていることが多いです。ただし、日常的に新幹線通勤をしている方はこの事情をよく知っているためか、「こまち」側にも列ができていました。

やがてE6系の「こまち95号」、E5系の「はやぶさ95号」が連結してやって来ました。

普段「はやぶさ95号」はJR北海道のH5系で運行されていますが、この日はダイヤの乱れの影響でE5系が代走していました。
一ノ関では仙台方面からの通勤客の降車も見られましたが、やはり乗車する人の方が多いです。


一ノ関駅に停車する下りの新幹線はほとんどが「盛岡」行きで、行先表示に「新函館北斗」や「秋田」と出るのは1日に1~2本のみ。この貴重な瞬間を目にできるのも、朝の限られた時間帯ならではです。

停車時間はわずか1分。乗降が終わると列車はすぐに発車し、盛岡方面へと向かっていきました。
7:40発 やまびこ97号 盛岡行き

やまびこ97号 盛岡行き
自由席1~6号車
一ノ関 7:40 → 盛岡 8:20
下りの2番列車は「やまびこ97号」。こちらも仙台~盛岡間の通勤需要に特化した新幹線です。この列車に乗れば、盛岡に8:20に到着できるため、通勤にはちょうど良い時間帯となります。
ただし、下り列車の本数は少なく、次の盛岡方面行きはほぼ1時間後。そのため盛岡方面へ向かう場合、この列車を逃すと遅刻が確定してしまいます。

自由席は後方の1~6号車。
先ほどの「はやぶさ・こまち95号」は、普通車ならどの空席にも座れます。そのため通勤客が分散されていたのに対し、この列車は自由席は6両のみのため、この6両に乗客が集中します。それもあってか、この列車は「盛岡行き」にも関わらず、並んでいる人の数は「はやぶさ・こまち95号」とほぼ同じ印象でした。
ちょうど同じ時間帯に、向かい側のホームには仙台・東京方面行きの「やまびこ50号」が到着します。しかし、一ノ関駅では普段、仙台・東京方面に向かう乗客が多いにもかかわらず、この時間帯に限っては盛岡方面の方が混雑しているように見えたのが意外でした。

車両は東北新幹線でおなじみの10両編成のE5系。
なお、10号車にはグランクラスがありますが、この列車では利用できません。

仙台からの通勤客が降車する様子も見られましたが、それ以上に乗車する人が多く、編成が短いせいか、先ほどの「はやぶさ・こまち95号」よりも混雑している印象を受けました。
この「やまびこ97号」の様子を撮影した動画を紹介します。
筆者も視聴しましたが、仙台~古川間の大きな需要に加え、一ノ関~盛岡の岩手県内の通勤需要も確認でき、とても参考になりました。
なお、盛岡への新幹線通勤の需要は、一ノ関からが最も大きくなっています。
この先、盛岡までには「水沢江刺」「北上」「新花巻」の3駅がありますが、各駅の事情により、意外とそこまで需要は大きくありません。
このうち、水沢江刺駅と新花巻駅は、市街地の中心部から離れているため、そもそも利用者は少なめです。一方、北上駅は市街地の中心部に位置していますが、北上~盛岡は50kmほどと近く、在来線での通勤需要のほうが高くなっています。そのため、新幹線通勤する人は一ノ関ほど多くありません。
なぜ盛岡方面への新幹線通勤客が多いのか
当初、筆者は「仙台方面の方が通勤客が多い」と考えていましたが、実際は盛岡方面の方が需要が大きいことが分かりました。
この理由を筆者なりに考えてみると、主に2つ考えられます。
同じ県内での移動であるため
一ノ関駅は岩手県に位置しています。盛岡は岩手県の県庁所在地である一方、仙台は宮城県なので、同じ県内にあるのは盛岡です。
先に触れたように、「岩手~宮城間の人の流れ(流動)が少ない」という点を踏まえると、日常的な通勤や通学は、やはり岩手県内の移動の方が主流と考えられます。

本数はあまり変わらないが、小牛田・仙台方面はほとんど2両な上、2時間間隔が空く時間があるのに対し、盛岡方面は最低でも毎時1本は確保され、朝夕は4両で運行する列車もある。
実際に、一ノ関駅を発着する東北本線の運行本数や車両の編成数を見ると、小牛田・仙台方面よりも盛岡方面の方が多めに設定されています。これは、それだけ岩手県内での移動需要が大きいことを示しており、その傾向が新幹線の利用にも表れていると考えられます。
新幹線通勤に対する手当の充実
最近は企業でも福利厚生として「通勤手当」をさらに充実させるべく、新幹線通勤を奨励する企業も出てきました。ここでは「岩手県職員」を例に考えてみます。
岩手県職員の場合、各地域の合同庁舎や現場で働く職員がいますが、最も多いのは盛岡にある県庁で働く人たちです。岩手県職員に適用される「岩手県職員給与条例 通勤手当に関する規則」には、第4条の2および3で、新幹線を利用した通勤に関する条件が以下のように定められています。
(新幹線鉄道等及び高速自動車国道の利用に係る職員)
第4条の2 給与条例第29条第1項第1号及び第3項並びに給与等条例第24条第1項第1号及び第3項の人事委員会規則で定める職員は、新幹線鉄道等又は高速自動車国道を利用せずに通勤するものとした場合における通勤距離が60キロメートル以上である職員若しくは通勤時間がおおむね90分以上である職員又はこれらに相当する程度に通勤することが困難である職員として人事委員会の定める職員とする。(一部改正〔平成23年人事委員会規則5号〕)(新幹線鉄道等及び高速自動車国道の利用の基準)
第4条の3 給与条例第29条第1項第1号及び第3項並びに給与等条例第24条第1項第1号及び第3項の人事委員会規則で定める基準は、新幹線鉄道等又は高速自動車国道を利用する場合には、その利用により通勤時間が新幹線鉄道等にあっては30分以上、高速自動車国道にあってはおおむね30分以上短縮されること又はその利用により得られる通勤事情の改善がこれに相当するものと人事委員会が認めるものであることとする。
簡単にまとめると、新幹線通勤で通勤手当を適用できる条件は以下のようになります。
● 通勤距離が60キロメートル以上、または通勤時間がおおむね90分以上であること
● 新幹線を利用することで通勤時間が30分以上短縮されること
これらの条件を満たす岩手県内の新幹線駅を、県庁最寄りの盛岡駅を基準に考えると、水沢江刺駅、一ノ関駅、そして二戸駅の3駅が当てはまります。詳細は以下の表のようになります。
| 水沢江刺駅から | 一ノ関駅から | 二戸駅から | |
| 盛岡駅からの距離 | 65.2km | 90.2km | 65.7km |
| 在来線を利用した場合の所要時間 | 約65分 (水沢駅からと仮定) | 約90分 | 約70分 |
| 新幹線を利用した場合の所要時間 | 約30分 | 約40分 | 約25分 |
| 通勤時間の比較 | -35分 | -50分 | -45分 |
たとえば一ノ関~盛岡間では、在来線を利用すると所要時間は約90分かかりますが、新幹線を使えば約40分で到着できます。つまり、通勤時間が50分も短縮されることになり、手当支給の条件を十分に満たすのです。
このような制度があることで、一ノ関~盛岡で新幹線で通勤する人が多くなるのも納得できます。
まとめ
今回は、JR一ノ関駅にて朝の新幹線ラッシュを観察し、岩手県における新幹線通勤の実態について考察しました。実際に見てみると、仙台方面よりも盛岡方面へ向かう通勤客の方が多いという意外な発見がありました。
しかしその背景を掘り下げていくと、地理的な立地関係や、県内外の都市圏の広がり方、さらには職場での通勤手当の支給制度など、さまざまな要因が関係していることがわかりました。こうした事実からも、交通と社会の結びつきの深さをあらためて実感させられます。

新幹線通勤は東京や大阪などの大都市圏で盛んに行われていますが、少数ながらも東北地方・岩手県でも行われていることが分かり、新幹線も「日常の足」として利用されている姿を目の当たりにすると、交通インフラの持つポテンシャルの大きさを改めて実感しました。
それでは、今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。


